このページでは当道場最高師範、 小川忠太郎先生(範士9段・小野派一刀流免許皆伝・故人)のお言葉、お話を紹介したいと思います。

        

当道場に入会を検討する上で参考にしていただければ幸いです。

小川先生のお言葉

 

 

●竹刀は真剣と思わなければいけない。そうでないと、本当の剣道が分からないまま終わってしまう。

●私は道場に入ったときから、何時死んでもいいという気持ちで稽古している。

●人間形成とは、常に直心でおること。之を直心是道場という。 

●今日はどうにも体の調子が悪いから、道場(宏道会)で死のうと思った。(70歳代の頃)

●動いている中で自分を失わないようになれば、これは本物だ。ところが、相手が動いていると、どこが本当やら 分からないんだよね。だから、剣道は難しい。みんな「当てっこ」になっちゃう。やっているうちに「対立」になってしまう。あの中で、対立にならないものを見つけたら本物だ。ボヤボヤしていれば相手は打ってくるんだから、非常に難しい。(「剣道話」第2巻より)

●剣と禅の両輪で真心の井戸を掘り起こす。そうすると、人がそれを飲むことができる。

●21世紀の剣道は、相手に動かされない肚を練るものでなければならない。

●剣道修行の目的は、自分が死ぬということである。自分を殺すということをしないで、相手を打とうとするのは間違いである。

●剣道で大事なところが二つある。

 一つ、持った竹刀は刀である。

 二つ、自分を作る、立派な日本人になる。自分のため、世の中のためになる誠の人になる。

 これが目標である。目標が分かれば、次は実行である。道場でやる稽古と日常生活とが一致する修行をする。 朝ねむいと思っても勇気を出して起きてしまう。勉強するときは勉強する、遊ぶときはよく遊ぶ。つまり一日の生活が剣道なのだ。稽古は、数をかける、そして続けることが大事である。これを「正念相続」という。
 

●剣道は、つきつめれば、面一本・面一本打てればよい。自然体で構えて真っすぐ振りかぶって面を打つ。その間雑念を混えない。形でも、切り返しでも、かかり稽古でも、すべて同じ。この面一本を覚える。これを真面といって、真面の出るうちは上達するといわれている。切返しや、かかり稽古をやってやり抜く。そうすると手や足がきかなくなり、息が上がってくる。全身全霊でぶつからなければならなくなる。そこで、今まで頼りにしてきたすべてのものを投げ出して、最後の面を打つ。この面が真面であり、すべてを投げ出したところに本当の自分の剣道の本体が悟れるのである。ただし、気でせめることを絶対忘れてはならない

●我が胸に 剣道理念抱きしめて 死に行く今日ぞ 楽しかりける。 (老居士辞世)

正しい剣道とは「剣と禅」より引用 http://www.ningenzen.org/pdf/kenTOzen.pdf

 

「幼少年に望む」

『私がただ今紹介にあずかりました小川です。村雲先生は,私が国士舘専門学校の教授をしていたときの学生であった。だから皆さんは私の孫弟子です。

 ところで,剣道を皆さんが一生懸命やっておるが,剣道で大事なところが二つある。

 その一つは皆さんが持っている竹刀を日本刀であるという考えで使うこと。これが大事なこと。四つ割りの竹刀で当てさえすればよいという考え方では駄目です。今試合がはやっているもんだから,そういう考え方の人がだんだん出始ってきた。

 

昨日,電車の中で国士舘の第1 回の卒業生に会った。自分の子供と稽古をやった。そのお父さんだって60 いくつかです。そして子供が面を打ってきた。そこでお父さんは胴を抜いた。そしたら子供さんが,お父さんのその胴では試合では1 本にならないと言った。そこで,お父さんが相手が打ってきたのを,体をかわしてこうやったのであるから,立派に斬れている。だから立派な1 本なんだと子供さんに教えたということです。

 

今は試合が流行しているから,試合で1 本になるということを目標にして稽古している者がかなりあるが,試合というものは,剣道の奨励法で,剣道の最後の目的ではない。

 それで,大事なことは「持った竹刀は刀だ」という考えでやるということ。そういう考え方が皆さんのような小さいうちに,頭の中に入ることが大事なのです。持った竹刀は刀だという考えでやる。そうすると剣道は本当のものになる。刀だという考えでやると,でたらめは出来ない。刃筋を立てて,真剣にやる。これが一つの要点,大事なところです。

 それから,もう一つ大事なのは,剣は道なんだから「剣道」,むつかしい言葉で言うと皆さんには分からんかも知れないが,全日本剣道連盟から出している理念では「人間形成」,そういう道なのです。つまり,皆さんなら,「竹刀を刀という考えで使って立派な日本人になる」ということです。それが目標だ。立派な人間になる,立派な自己になる,これが目標であることを忘れちゃいけない。二つある。剣道で持っている竹刀は,刀ということ。それにもう一つ,それで何をやるかというと「人間形成」,人間になる。人間とは何か。日本人になる。日本人とは何かというと,それはほんとうの自分であります。それが目標ですから, それを一つ忘れないで,そういう目標で修行する。

 

 目標が決まったら次は実行です。道場でやる稽古と日常生活とが一致する修行をする。毎日毎日の。剣道で自分をつくるのですから,朝眠いと思っても,起きるときは起きてしまう。これが剣道なんだ。5 時に起きようと思ったときは,5 時に起きる。そして起きたらすぐに蒲団でもなんでも身のまわりのものをちゃんとする。これが剣道なんだ。いちいちお母さんに,ああやこうや言われないでちゃんとする。そして勉強するときは勉強する,これが剣道です。

 

勉強ばかりする訳ではなく遊びもする。遊ぶときは,よく遊ぶ。つまり皆さんの1 日の生活が剣道なんだ。その土台を道具をつけて,竹刀を持ってやる,真剣にやる。分かるでしょう。

 それで道具をつけて持った竹刀を刀という考えで真剣にやると,その人が,簡単な言葉で言うと,ビクビクしない人間ができ上がる。ビクビクしないでやることをやっていると,そのしまいにはどうなるかというと,やっていることが楽しみになってくる。剣道でもそうですよ。

 

刀という考えで,人間をつくるという考えでやっていると,初めは苦しいが,しまいには,剣道が楽しくなる。遊んでいるようになる。その代りその遊んでいるような状態でやっている人が一番強い。強いという人は遊んでいる。弱い人はこうしている,一生懸命に肩が凝っている。

 皆さん!! 稽古は数をかけるということ,続けることが大事です。続けてゆきさえすれば,だんだんそうなる。この続けるということが誰にも出来ない。刀という考えと立派な日本人になるという考えは分かっても,この続けるという実行が欠けてはものにならない。実行するには勇気がいる。この勇気は皆さんのときにも,20 才ぐらいになっても大事です。50 才になっても大事です。私みたいに,もう80 才近くになっても大事なんだ。

 

人間が生きるという根本というものはこの勇気なんだ。この勇気で修行が続くのであり,この続けるということが,道の極意なのであります。どうか,私が今言った三つのことを憶えておいてください。


① 持った竹刀は刀である。
② 自分をつくる,立派な日本人になる。自分のため世の中のためになるまことの人になる。
③ 修行は一生涯続けること。


 この三つが大事だから,今日みなさんにその三つだけを話しておきますから,それはみんな,皆さん,実行できることですよ。それを実行して剣道で立派な人間になってもらいたい。それを難
しく言うと,全剣連で,「剣道とは,剣の理法の修錬による人間形成の道である」こういうことになる。それを私はなるべく皆さんに判りやすいように,全剣連の理念をお話したのであります。』

父兄の方々に(「剣と禅」より引用)

『私がただ今紹介にあずかりました小川です。御父兄の方に,これから30 分お話しましょう。それで,小中学生で出来る人は,足の親指を軽く重ねて膝頭をこぶし一握り半位あけて坐って下さい。その上背骨をまっすぐ伸ばしなさい。出来る人は,話は判っても判らなくてもいいから,その姿勢で聞いて下さい。出来ない人は,途中で足が痛くなった人は,くずしてもいいですよ。まえにそれだけ。父兄の方は楽な姿勢で聞いてください。

 ちょっと小学生には難しいけれども『維摩経ゆいまきょう』というお経の中で,「直心是道場」というのがある。皆さんは道場というのは,こういう決められた場所で,このように神様を祭って,そしてちゃんと掃除をした,こういう場所を道場と思っているでしょう。これも道場なんです。この道場で立派な人間になる。

 

これも道場なんだけれども、本当の道場は,こういう形のある道場ばかりではなく,直心というのは正直な心,すなおな心,皆さんが生まれたときに持っている心,これが道場なんです。この直心さえ見失わなければ,どんな所へ行っても道場,便所へ行っても道場,食事のときも道場,どんなに騒がしい所へ行っても道場,道場でないところはない。これが本当の意味の道場。それを頭に入れる。

 それは修行してそうなるんじゃない。修行なんかしなくても生まれたときにもう持っている。赤ちゃんのときに持っている。だから赤ちゃんのときに意思表示するでしょう。あなた方が赤ちゃんなら誰だってそうですよ。意思表示するのは,オギャ,オギャと泣き叫ぶ。その理由はそれで意思表示している。直心から。そうするとお母さんは直心から,アハハーン,これはオッパイだなということ,オギャ,オギャからそれが判る。またオギャ,オギャといったら,アハハーン眠いんだなということが判る。オギャ,オギャからこれはオムツだなと,同じ泣き声で聞き分ける。それは何故かというと,お母さんも生まれながらに持っている直心で聞くから判る。

 

子供とお母さんが一枚になってしまっている。これは修行してからじゃない。人間は生まれながらに持っている証拠です。これが大事なんだ。それでこれをなくさないように,持っているんだから,人からもらうんじゃない,教わるんじゃない,持っているんだから,そのものをなくさないように育てて行くのが人間の一生涯の仕事。それを孟子という人は,この直心,これを【直を以って養うて害するなくんば,天地の間にふさがる】と言っている。

 

天地の間というのは、まず自分がおさまる。小学生なら小学生,先生が見ても,親が見ても友達が見ても「ああいい生徒だなあ!」と,それで大きくなって家庭を持てば家庭がおさまる。もっと出世して重要な地位につけば,どの場所でもおさまる。先ず身をおさめ,家庭をおさめ,国をおさめ,世界もおさめる。これが天地の間にふさがるという意味です。ただ直心を養ってゆきさえすればよい。それなら自分は持っているんだから修行なんかしなくてもよいとそう思う。

 ところがそうじゃない。直心に雲をかけるようにまわりが仕掛けてくる。そこで修行がいるんですよ。今天地の間にふさがると言った孟子という人のお母さんは,孟子が生まれてから,3 回住居を変えている。お寺のそばに住んだら,子供がもう坊さんの葬式のまねばかりしている。こりゃ大変だと,こんどは商のところへ行ったら,こんどは子供は物の売り買いのまねばかりしている。ここも駄目だと,しまいには学校のそばへ行ったら,こんどは子供が勉強をするようになった。3 回変えている。

 

それで賢人として後世に残るような立派な人になる土台ができたのです。周りで悪くなる。皆さんもそうですよ。小さいときも,悪い友達と付き合っていると悪くなる。そういうもんだから,そこに修行がいる。修行もただ修行しろ修行しろでは駄目なんです。その直心がそのまま育つように自分で工夫して生活していくことが大切です。それを五つに分けて五つの戒としてお話しましょう。


五戒
一 嘘うそをついてはいけない
一 怠けてはいけない
一 やりっぱなしにしてはいけない
一 我儘してはいけない
一 ひとに迷惑をかけてはいけない

(この五戒は私が最高師範をしている千葉県市川市にある人間禅教団附属剣道場宏道会の道場訓です。)

 その第一は,正直,嘘をついてはいけない。人をだましたり,そういうことをしちゃ駄目。正直,そうするともう上級生の大きい者なら,正直をすると馬鹿をみる。大人が言っているじゃないか,「正直者は馬鹿を見る」,大人が言っているだろう。それは言っている大人が間違っています。嘘でやってごらんなさい,剣道を。ごまかし稽古,はじめは当たる。こんなことやって,こんなことやってれば当たる。すぐ止まっちゃう。それでもう頭打ち。一人前にはなれない。剣道ではそれを色という。色を使うな。これが嘘をついてはいけないということ。正しい稽古をする,嘘をつかないとどうなるかというと,相手にだまされなくなる。相手がだまそうとしても,自分にはちゃんと持って生まれた直心があるのだから,だまされなくなる。

 

だから相手が何か言ったってそれは嘘だろうというと,相手は“アー”と引込んでしまう。剣道の場合,それは嘘だよと,ポンと打ちさえすればよい。だから嘘をついてはいけない。これを肚によく入れておいて下さい。これが個人としても,社会に立つ本であり,国もこれが本なのです。人間もこれが本なんで,これを「信」ともいう。だからこの本に背いては駄目。嘘をついてはいけないとはこういうことであります。

 その次に直心を育てるためには,「怠けてはいけない」。先生がこれを勉強しなさいと言われたらそのとおりに勉強する。うちのお父さんお母さんがこういうことをやりなさいと言われると,直心,すなおな気持でやる。怠けない。まあ小学生には判らないけど,中学生なら判るだろうと思う。天才というものは努力なんだ。

 

あの人は天才だというのは,怠けないで一つのことをやり抜く人なんだ。私の県(埼玉)に本多静六という林学博士がおった。この人は中学3 年のとき数学で落第した。それで悲観して,死んじゃおうと思って井戸に入った。ところが井戸のふちで手が離れないで死にきれないで出てきて,それからもう数学を一生懸命にやった。そしたら、ある年数が経つと,先生“本多は数学の天才だ”と言われるようになった。そこで本多さんは天才というものは努力だと思ったと。

 

それは皆さんが学校でできない科目があったら,これを怠けないで本多式にそれをやるんです。できなかったらできるまでやる。剣道だったら,正しい技をくり返し・くり返しやる。そうするとひらけてくる。これが大事なんだ。

 

社会で落伍して悪いことをする人は,はじめは嘘を云うんだ。その嘘をいうことは,何かというと怠けから来るんだ。怠けているから嘘を云わなければならないようになっちゃう。それで嘘つきで怠け者ならば,もう皆さんが大きくなってからは,人として通用しなくなる。人間社会というものは信用で出来ている。社会には通用しない。こういうことが皆さんの耳にちょっとでも今入ったら大したものですが、なかなか入らんけどね。

 

小さい時に,こういうことが入らなくちゃいけない。弘法大師は,7つのとき,人間として生まれてきてつまらなく死んでも馬鹿馬鹿しいから,立派な人間になれなきゃ死んじゃおう,なれるかなれないかの運だめしだと,山から下へ跳び下りた。そしたら途中で帯が木にひっかかって死ななかった。これは俺はほんとうの人になれると,7 つの時から努力した。それで一世を教化するような弘法大師になった。だから皆さんが,「なるほど、怠けてはいけない,天才とは努力である」ということが本当に判ったら偉い人になる。

 

“怠けちゃいけない,俺は怠けない”,こういう風なことがよく判ると,大したもんだ。なるべく早くがよい。おそくとも12・3 才でこれが判ったら何事でも大成する。12・3 のところが人間の変わり目です。満でね。そこで,パッと決まれば後はお父さんお母さんにああだこうだと心配をかけないで自分でちゃんと出来る。「嘘をつかない」,「怠けない」。

 それから「やりっぱなしにしてはいけない」。これが大事なんです。道場に入るとき靴を脱ぎっぱなしにしておかないこと。帰るとき道具なんかも元のところにかけておくこと。これが出来る人は,社会に出て個人としては立派なんです。難しい言葉で言えば,責任を持つということです。やりっぱなしにしない,言ったことは実行する。そうでしょう。剣道でもここが大事なんだ。一本打つ,打ちっぱなしにしちゃいけない。

 

その後は残心という,打った後油断しない。もうすぐ次のものに備える。この項目を欠いた人は剣道は上達しない。やりっぱなしにしない。これをよく頭に入れといてね。毎日の皆さんの生活の上にもそれをやる。戸をあけたらしめる,あけっぱなしは駄目だ。今日の学校の授業のときも,一生懸命に先生の話を聞く。うちへ帰ったら,後で復習するんだ,これが「やりっぱなしにしない」です。そうするとすっかり頭に入っちゃう。

 

「嘘をつかない」,「怠けない」,「やりっぱなしにしない」。この3 つができれば,個人としては幸せな生活が一生涯できます。運が良かろうが悪かろうが,この3 項目でずぅっと貫いていけば生活が楽しくなるのです。人間はどんな境遇でも毎日毎日が楽しいということであれば,一個人としては大成功者です。この気持を「日々是好日」といい,剣と禅で修錬した山岡鉄舟居士は〖晴れてよし曇りてもよし富士の山 元の姿はかわらざりけり〗と歌っておられるのであります。ここまで修錬すれば人間個人としては完成されたと申せましょう。

 次の2 カ条は社会的なもの,今のところは覚えておいて,だんだんに心掛けていっていただきたい。「我儘してはいけない」。これは難しいですよ。我儘をしないとは,つまり友達を,相手を立ててやること,相手を尊敬することです。この心が社会人となる本です。

 

これで人間が大きく育つ。家庭でもそうですよ。皆さんがわがままをしない,そうなると,そういう子供をみると親が教育されちゃう。親をたてる,親を大切にする,社会的には相手を尊敬する。これはなかなかできるものではないけれども,こういう項目で修錬しないと人間の幅が広くならない。「我儘をしない」,判るでしょう。言葉は。

 

「ひとに迷惑をかけてはいけない」,言葉をかえて言うと,これは人を愛するということ,人に親切をつくすということ。これが大和魂の根本だ。「大和魂とは人に親切をつくす心なり」。ここまで行った人は世界に敵はない,ここが剣道の極意です。人に迷惑をかけない,人を愛するという気持でずぅーと構えられると,もうその人の前に行くと頭が下がっちゃう。ということはどういうことであるかというと,そういう愛情の前に行くと,自分の持って生まれたこの直心・愛情が出てくる。だから打合はいらなくなる。剣道もこれが極意,人間の極意もここなのです。

 「ひとに迷惑をかけてはいけない」。憶えておいて出来ることからやることですよ。お互い友達同士で交わる場合に,ひとに親切にしてやる。そうするとその人間がグングン大きくなっていく。この反対が世間によくある「人を泣かせる」。こういう者がある。皆さん小学生で親を泣かせるようなことでは駄目ですよ。またいくら言っても朝も起きない。ホラホラ・・・といちいち親に心配をかける。それは駄目なんです。

 

この五戒は自分と社会をつくる一番大事なことだから,この5 つを皆さん,最初は言葉でおぼえて,毎日一ぺんか二度,もっと多ければなお結構,これを言うんですよ。そうすると言葉でおぼえていると,今度は実際のときに,“ああ,そうだったなあ,俺はあれをやりっぱなしだったなあ! 言ったことをやらなかったので,これは嘘だったなあ! ”と。言葉でおぼえていると日常生活で反省ができ,そしてどんどん伸びていく。一番皆さん小学生時代は大事なときですから,まず前の3 カ条をしっかりやって下さい。「嘘をついてはいけない」こと,「怠けてはいけない」,それから「やりっぱなしにしてはいけない」。

 剣道は何をやるかというと,剣道は人間をつくることです。どういう人間であるかというと,この5 カ条が出来るような人間になる。この5 カ条は,つめればどこにゆくかと言うと直心にきちゃう。この5 つを守っていけば,生まれた時に持ったままの人間の本心というものが,ずぅーっとこの5 カ条によって養われてゆく。

 

この5カ条をよく養えば,何をやっても出来ないことはない。学者の素質があると思う人は,小学生時代から本当に怠けずにやったら,大学者になっちゃう。だから皆さん,この5 カ条をよーく肚に入れてほしい。この5 カ条の種は直心,直心というものは皆自分で生まれながらに持っている。先生から教わるものではなく,持っている。持っているのだから育てなくちゃつまらない。難しいものじゃない。持っている,それであの人も人間なら俺も人間じゃないかという勇気を出して,剣道をとおして誠の人間になってもらいたいと思う。

 省みて,私も77 才になりましたが,まだこの五戒は恥ずかしながら完全には実行できません。出来ないからこそ一生懸命に,今に修行しておるのです。小学生の皆さん一日一日新たになって一歩一歩踏み外さないように全力でお互いに修行を続けて参りましょう。
 

                     合掌
                (淩雲館において)』

 

小川先生語録

(準備中)