小川忠太郎先生剣道話(42)~「世の中のことは、みんな剣道だ」(石田和外)~
(宏道会)24周年の記念式にあたって、一言私の考えを述べます。 この式にも出席したことのある人てすが、昨年亡くなった元最高裁判所長官の石田和外さん。 石田先生が30代の時に私にこう言った。 「世の中のことは、みんな剣道だ。みんなやらないから、知らないんだ。」 石田先生は、そんなに秀才じゃないですよ。東大で落第している。 それで最高裁の長官までいって、4年間勤め上げた。 法曹界では大成功ですよ。 それが何かというと、剣道なんだ。 これは、どの方面の人でもそう。 内原(茨城県水戸市)に加藤完治という人がいる。 満蒙開拓義勇軍を作った人だ。この人も、 「世の中のことは剣道が根本だ。」 と言っている。 この根本の上に色々なものがある。根本は剣道なんだ。 戦争で負けたから事業は失敗したがね、これは大事業だった。 それから、あの先生は大教育者なんだ。その元は剣道なんだ。 (中略) つまり、剣道は、軍人でも教育家でも役人でも他でも応用できる。 岩崎小弥太さんなんかは実業家だ。 「どんなことがあっても、三菱では剣道を止めるな。」 と遺言している。 剣道は元になる。そういうことを皆さんは知っとく必要があるね。 ところが、どんな剣道でも良いというわけじゃない。 石田先生が言う剣道とは、無刀流なんだ。 山岡鉄舟先生の剣道なんだ。 竹刀だって3尺2寸の短い竹刀を使っている。 それで、無刀流と一刀流の形をやった。 これが石田先生の剣道なんだ。 今言った加藤完治先生の剣道は、直心影流の形なんだ。 道具を付けた打ち合いじゃない。 軍人の草刈さんは、無刀流の形。 そういう剣道なんです。 これが大事なんです。 (以下、次回に続く) 昭和55年8月 (『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より)
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