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執筆者の写真宏道会案内人

腹が決まらないと呼吸が胸に来る(上) ~小川忠太郎先生剣道話(69)~

〇〇先生は、切り返しの時に右手に力が入っている。剣道をやっていると癖がつくからね。 右手の力を抜いて、肩の力を抜く。

右手の力を抜くことと関係のあることだが、左足を真っ直ぐにする。道を歩くように。左足で立っているくらいでちょうどいい。

その一番の基礎が「法定の形」なんだ。

これが決まらないと「腹」が決まらない。腹が決まらないと呼吸が胸に来る。 だから、法定の形で最初にそこを教える。「ハァーッ」と(吸気して)息を腹に持ってくる。 腹と腰。それで「体」が決まる。あとは、これを崩さなければいい。 ここが根本なんだ。

今の人はみんな、これを知らないんです。 古流の形が一番初めに教えている極意は、一刀流では「腹と腰と顎(あご)」と言っている。その根本は「腹」だ。 腹が抜けていると腰が引ける。腰が引けると顎が出る。からだが、ばらばらになっちゃう。 柳生流では「はーせ」と言っている。「は」は腹。「せ」は背中。これをしっかりやる。

切り返し、掛かり稽古でもこれをやる。 で、一番良いのは法定の形。これを練っていくと、リズムが腹と腰から出てくる。歩くのも、足で歩くんじゃなく、腹と腰で歩く。

禅も腹と腰だ。 ここがリズムの出る根本なんだ。ここが崩れるから、全体が狂ってくる。

どう崩れるかというと、「打とう」と思うから崩れちゃう。相手が恐ろしいと思うと胸に来ちゃう。

その状態を、すぐ腹と腰に収める。

それが修行だ。

     (下に続く)

昭和57年4月25日 宏道会剣道場にて述べる

(『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より)


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