小川忠太郎先生剣道話(38)~カマキリの精神、ガマの修行~
人間は、何かに感じないと駄目なんだな。いくつになっても感じるんだね。
この間、納戸の本を読んでいたら、山本玄峰(明治-昭和期の臨済宗の僧。「白隠の再来」「昭和最大の禅僧」などと称された。)さんが70になるちょっと前にね。龍沢寺で、夜かも知れないが、犬とカマキリが喧嘩しているというんだ。
面白いな!と見ていたらね、犬が「ワンワン」というと、カマキリが、こう手を出す。
すると、犬が下がるそうだね。
カマキリなんか、犬がちょっと何かすれば死んじゃうだろ。それでも、カマキリが「ウッ」と行くと、犬は下がる。
それで山本玄峰さん、感心したって言うんだね。
この、「やろう」という気があると、それだけのものがある。「それが非常に修行のためになったと言っている。何か、内に燃えている「火」がある。
70でそれを感じている。普通の人ならヨイヨイになっちゃうよ。
90歳ぐらいのとき、また机の上にカマキリが寄って来たって言うんだ。そのカマキリを見てね、また発憤したって言うんだ。90になって。
だから、偉い人は違うね。90になってだよ。その本を書いているのが93のときだ。亡くなったのが96。
小学校にも行かないで、社会の指導者になるんだから、「本物」を持たないとね。
(以下、次回に続く)
昭和55年7月
(『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より)
タイトル、構成、()内…栗山令道
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