小川忠太郎先生剣道話(3)~捨て身の中に愛情がある人~
一本目は捨て身。自分がないということだね。
世の中で言えば辞職願いだ。それで相打ち。これを一生懸命やる。
石田和外先生の処世法は、あれ一本だ。それで認められて、他にそういう人がないから最高裁の長官になった。
「世の中は剣道だ」と言っている。「みんなやらないから知らないだけだ」と。
無刀流だ。形でそういう所を覚える。若いうちに早く覚えた方がいい。歳を取らないうちにな。
石田先生の捨て身の中には愛情が入っている。あれは生まれつきだな。非常に人を可愛がる。それで最高裁の長官になった。
捨て身だけで愛情がないと、人間が小さくなっちゃう。だから愛情がなくっちゃいけないね。
石田先生には愛情がある。捨て身プラス愛情の人だ。それであれまでいった。
そういう深いものがあるんだから、形の稽古をしたら、技術ばかりでなく形の中に含まれている精神を学ぶ。一生涯の精神的な財産になる。
(来週に続く)
昭和54年12月
(『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より)
令道 記
Comments