小川忠太郎先生剣道話(28)~剣道とは「死んで生きる」こと~
剣道とは「死んで生きる」ことなんだ。そういう意味で剣道は、生きて行く大事な柱だ。
加藤先生(第26話参照)が書いている「一刀両断」。ここ(宏道会)のような稽古をすれば、それが十分に身に付く。
自分ですでに持っているんだけどな。持っているものに、さらに十分磨きをかける。将来、やっておいて良かったなと思う。
これと、もうひとつ大事なのが「分担」。【両鏡相照らす】というあれだよ。
自分だけじゃない。自分もあれば社会というものもある。二つのものでね、二つのものが一つ。「両鏡」だよ。【両鏡相照らす】。
妙峰庵佐瀬孤唱老師揮毫「両鏡相照」 お互いに立ち会ってね。剣道でここまで行けるわけだ。山岡(鉄舟)先生の剣道はこれだ。 まあ、ここまで行かなくても、「一刀両断」でも大したものだ。 そういう「強み」というものは、余程練って自分のものになっていないと、社会に出るとごまかされちゃう。 剣道ではそれを「色」って言う。自分の方が浮いちゃう。 おかしいじゃないか、正しい方がおかしいやつに負けるなんていうのは。 浮いちゃだめだ。「色」、「虚実」だ。それに「ヒョッ、ヒョッ」と引っ掛かる。 余程練っておかなきゃ。生活どころじゃない、稽古だってそうだよ。 よそへ行って稽古して、おかしなことをされると変になっちゃう。ちゃんとした自分が出来ていないとね。 一緒になって、でたらめやって駄目になっちゃう。 口では「一刀両断」と言ったって、実際身に付くのは大変なことだ。 剣道のこういうところをある程度分かって、社会で応用して生活したのが、笹森先生(<注>小川先生の一刀流の師。青山学院大学学長、国務大臣を勤めた。『一刀流極意』著者。)と石田先生(<注>無刀流継承者。元最高裁長官。小川先生とは肝胆相照らす間柄であった。無刀流継承者。元最高裁長官。小川先生とは肝胆相照らす間柄であった)だ。 石田先生なんか「世の中は剣道だ」って。 「皆やらないから分からないんだ」って。 あの人の教え方は剣道だ。 あれまでに成れば、剣道をやったことがプラスになる。 昭和55年4月 (『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より) タイトル、()内、<注>…栗山令道
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