小川忠太郎先生剣道話(33)~剣道は、「一心一刀」~
剣道は、簡単に言えば「一心一刀」ということ。「一つこころ」。 二つになっちゃ駄目だ。一つこころ。これが「切り落とし」。 これを、形によって、数をかけて自得する。 だから、要点は「百練自得」。覚えるんじゃない。やって自得する。 『中庸』という本にね、「人が一回やったら十回やれ。十回やったら百回やれ。百回やったら千回やれ。愚といえども必ず明」と書いてある。 初めはもやもやしていても、必ずはっきりする。 「弱といえども必ず強」。弱い者でも必ず強。 秘訣は数をかける。 修練。百練自得。それを頭に置いてね。 「一心一刀」。これは言葉じゃない。 相手とこう構える。相手と正対すると「一心一刀」。 かたちだけ正対していても、「もやもや」していては「正対」じゃない。雑念が入るから「一心一刀」じゃない。 「正対」していればいいんだ。それを自得するんだ。それに色々な名前が付いているから、名前にごまかされないように。 「三昧」といったって名前だ。『不動智神妙録』の「応無所住而生其心」(おうむしょじゅうにしょうごしん)だって名前だよ。 名前でなく、本当に「一心一刀」になる。それは百練自得より手はない。 形でも、総てはそこが大事。 「一心一刀」。1日のうちに1本そういう技が出れば大成功。1週間に1本もそういう技は出ない。 一生懸命やっても、1年に1本も出ない。 だけれども、目標はそこなんだから、しっかりやるように。 昭和55年5月 (『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より) タイトル、構成…栗山令道
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