小川忠太郎先生剣道話(13)~剣道は技と心~
専門でない人の中に、剣道を真面目に研究している人がかなりおるな。
坂西さんなんかもそうだ。法定の形の打ち方を一所懸命勉強しているな。何かを求めてる。
内原の酒井さんも専門家じゃない。法定の形に魅力を感じて一生涯やってる。
これが日常生活の土台になってる。
専門家というものは面白いもので、ほとんどの者が試合というものに煩わされているんだな。
大会に優勝したとか。もう一つは段だね。段が上だとか。
どっちも大した事じゃないんだ。人間の第一義とすればね。それに引っかかって本当の所へ行けない。本当の修行に目が付かない。そういう傾向だな。
ところが、どちらにも欠点があって、専門家でなくて本当の修行をしようという人は技が駄目だね。本物じゃない。
剣道は技と心だ。事理一致が剣道だからね。
だから、専門家でない人で構えの出来る人はありゃしない。構えが出来なくては技は出来ない。
ただ「精神だ、精神だ」と言って、空論になっちゃう。
専門家の方は「技だ、技だ」と「当てっこ」になっちゃう。
これも駄目なんだ。
両方兼ね備えるというのはなかなかない。試合だとか何だとか、そういう枝葉末節の方へ走りやすい。
剣道を専門にやってる人には、「剣道の元は古流の形にあるんだよ。」と教える。古流の形なんか顧みないからね。
古流の形どころじゃない。禅なんかほとんど無関心。ただ「当てっこ」だけ。
しかも、剣道の技が出たら目なんだ。法定の形をやらして、刃筋も何もありはしない。
それは教えた人が悪い。形で一番大事なのは、「刃筋を立てる」。横殴りじゃ駄目。刀の法に反する。
そんなことやってて、剣道は分かるもんじゃない。
昭和55年3月
『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より
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