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命懸けの所では「ゆったり」と(上)~小川忠太郎先生剣道話(66)~

…あの関係(一刀流5本目の脇構之付)は面白いよ。そういう所が分かると、人間がゆったりする。今の人はチョコチョコ、チョコチョコ忙しそうだね。 (5本目は)刀と刀を合わせておっても、「現在」に「ゆったり」しているでしょ。「現在」というものに余裕があるよ。「乗って」るんだ。「ズーッ」と。あの「突き」がなければ、生きておっても面白くないや。チョコチョコ、チョコチョコ。生きていて、くたびれちゃう。頭ばかり使ってな。頭を使わずに「ズーッ」と。

それじゃ、何も出来ないかというと、そうじゃない。相手が無理をすれば「パッ」と行く。ああいうふうに行かなくちゃね。「ハッキリ」しているな。 そういう形の理合が、自然に日常生活に使えるようになるといいね。

根本が真剣勝負だもの。哲学じゃないんだもの。頭で考えたものじゃないんだから。真剣勝負から見ているんだから。日常生活も「ゆったり」してね。

剣道の理合は、日常生活の上でも面白いよ。同じ出来事は二度ないからな。同じようだが皆違う。あの手で来るかと思うと、同じものはないよ。みんな新しい。 だから、自分の方が「ハッキリ」していないと、それに応じられない。覚えておったんじゃダメだ。これが修行になるね。

つまり、同じことは二度ないということだ。それから、やり直しが効かないよ。いっぺん腕を斬られちゃったら、元に戻すことは出来ない。剣道には「元へ」はないよ。

それだから、「いいからかん」じゃいけないよ。そこに、ちゃんと「段取り、真剣、締めくくり」が出来てないといけない。

そういう所を学んでいくと、剣道というものは実生活に役に立つ。 「やり直しが効かない」という所。それから「同じことが二度ない」という所。同じ人でも、もう違っている。だから、常にこっちが新しくなくちゃいけない。 それだから、大勢の人が剣道をやるんだね。誰も奨励しやしない。ずいぶん大勢の人が稽古してますよ。

剣道の理合と処世。剣道は、本当の技を一本覚えればいい。それが大変なんだよ。それが一本出来ると、それが元になって、別の技が出来てきる。それまでが大変だ。

一本が千変万化になる。処世だってそうだね。

焦ることはないんだな。若い人は、最初職業に就くのが大変だ。そして、一旦職に就いてしまえば、そこでひとつ抜きん出ないとな。これが一本だよ。そうすると、そこから開けていくね。

面白いね。だから、現在いる所で嫌われたり、何かするようじゃ、まずいね。

昭和57年4月18日 宏道会剣道場述

(『小川忠太郎先生剣道話 第一巻より)


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