小川忠太郎先生剣道話(11)~3尺8寸、これはスポーツだ~
剣道の時の気持ちは、真剣勝負。今の剣道は、明治38年に武徳会が出来て、3尺8寸の竹刀になったが、これはスポーツだ。
昔は、刀が3尺4寸、山岡先生は3尺2寸、柳生流なんか2尺2寸。これだから、人間の命懸けの精神が出来る。
例えば、一歩出るコツでもね、宮本武蔵は坐禅の歌として言っている。【振りかざす太刀の下こそ地獄なれ、一足進め、あとは極楽】。
坐禅の歌だ。宮本武蔵は晩年は寝ないで坐っていたらしいね。
柳生流では、これを剣道の歌として【切り結ぶ刀の下こそ地獄なれ、ただ切り込めよ神妙の剣】。この方が剣道としては実際的だな。「一足進め」じゃ生ぬるいや。
ここの所でね、「ただ切り込めよ」。
ただ一本「ズーッ」と。地獄の、出にくい所で切り込んで行く。
これが神妙の剣。これを覚えるのが剣道。
一刀流では、これを「切り落とし」と言っている。本当の相打ちだね。これを覚える。
だから、その根本は精神の問題だ。その精神が古流の形の中にあるんだから、形を一生懸命にやらなきゃいけない。
真剣勝負のつもりでやれば、法定(直心影流)の形でも「ズーッ」といく。全身で「ズズーッ」とやる。
もっと徹底的に言えば、その形のもとは坐禅だね。
「ズーーッ」と坐った所から立ちゃいい。
そういう剣道をやっていると、自然と結果として人間形成が出来る。
(次回に続く)
昭和55年3月
『小川忠太郎先生剣道話 第一巻』より
令道 記
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